それは、ここではない場所、ここではない星、今ではないいつかの話。
報告書にあったのは、見たこともない衛星写真。
太陽をはさんでぴったり反対側に位置するそれ。
太陽系第三惑星、というわけではない。それは今現在のこの星。
しかし。しかしだ。
大陸は5つ。地軸の傾きは23.4度。それはこの星の複製品のよう。ただし、違いを見つけるのはとても容易。主要都市がない。あるべき場所は緑に覆われている。
その写真は波紋を呼んだ。
唐突に現れたその惑星。発見したのは誰だったか。それはこの地球にとてもよく似ている。似ているが、似ていない。文明の痕跡がまったくもって見当たらない。
それはまるで・・・・・・。
その惑星は、私たちの論議の的になった。ある人はもうひとつの地球はやはりあったのだと主張し、ほかのある人はどこからか飛来してきた惑星が地球の軌道に乗っかったのだと言い、見当違いの論まで飛び出し、昼夜構わず話題を呼んだ。
私はその論議を聞きながら、そういえば太陽の反対側にもうひとつ星がある、なんて話題があったっけ。なんてことをぼんやり考えていた。それはとても昔の。まだ、月まで行くのが精一杯のころの話。
宇宙進出が可能になってすぐ、その調査に乗り出した人もいたが、発見はできなかったとか。
□ ■ □
答えに辿り着かない論争の結果、私達はその惑星へ出向く事にした。
現在の科学は、宇宙進出も手軽だ。すぐさまチームが結成され、その惑星の調査が始まった。
調査の報告は大体こんなものだった。
太陽をはさんで反対側に位置するその惑星は、地球と同一であるとしか言い様がない。
5大陸が存在し、地軸の傾きは23.4度。我々の星とまったく同じ位置に同じ火山や海溝が存在。また、不可思議な点として、大きな川に沿った4箇所に、小さな文明が見られる。それは現在のエジプト、インド北部、中国、イラク付近。ちょうど、古代の4大文明と一致する。
その星の住人は物事の飲み込みが早く、わずかな技術を教えただけですぐに発展させることができる。それぞれ、その地域にある材料しか使えなかったが、それでも十分のようだ。
・・・・・・なんだか頭の痛くなりそうな報告書だ。
太陽の反対側に位置するその惑星。
まるで、この地球の時間をそっくり巻き戻してしまったかのよう。
そしてあれだ。
宇宙からやってきた見知らぬ人が教えた技術を使い、文明は発達していく。壁画や文書、あるいは宗教などにその一部は残され。
遠い未来に謎を呼ぶ。なんてことになるかもしれないのだ。
そして、あるひとつの結論を仮定してみた。
あの惑星は、突然現れたものではなく。
逆に、私たちのほうが突然現れたのだ。と。
そして、あの惑星が私たちと同じ発展を遂げ、いつか同じことを繰り返すのではないか。
では。あの惑星が現在の私たちと同等の技術を手に入れた時。この星はどうなるのか。私たちが見つけられなかった惑星と同じように、なくなってしまうのかもしれない。
あくまでこれは私一人の結論。
それが本当かどうかは・・・・・・反対側のあの星の未来を見つづけない限りわからない。
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