THE MOMENT

 回る視点。
 響く頭痛。
 空を蹴り上げる足。
 空気をかき回す腕。

 何が起こったのか、よくわからなかった。

 回った視界の先には、翻る黄色い影。
 通り過ぎた視界には、銃を構える人影。

 とてもゆっくり動いているように見えていたそれらの風景は、床に叩きつけられた衝撃が背中に走った途端、その速度を一気に速めた。

 天井が遠い。
 息が詰まる。
 頭が痛い。
 口の中に鉄の味が広がる。
 思わず漏らした自分の声が、自分のものに聞こえない。
 視界は次第に暗くなる。狭くなる。
 意識が、遠のく。

 ひどく悪い視界の中では、自分の長いようで短かった人生が単調かつ簡潔に、低画質でさらりと上映される。
 幸せだったようで、実の所そうでもなかったような自分の生涯は、このような実にあっけない形で幕を下ろすのだ、と。文章めいた言葉が、無理矢理思考に割り入ってくる。

 混乱する冷たい意識の中で、己の死期を否応なしに認識させる。

 ところで。
 と、もうほとんど閉ざされた闇の中で思う。

 私はあの空中に舞うバナナの皮と構えられた銃。どっちに殺されたのだろう。

学校の課題で書いたものです。それにちょこっとだけ加筆訂正。
「瞬間を切り取った400字程度のショートショートを書け」だったのですが、果たしてこれはそうといえるのかしら。とりあえず、起承転結と小気味の良いオチは心がけた所存です。はい。w
どちらに殺されたのかは、明確です。ちゃんと文章中に理由もあります。
さぁ、どっち!(ぇ