えきすとら

 見守る群衆。
 その中で、まだ幼さの残る少年はそっと剣に手をかけ。
 周囲の人々は息を呑んで。ただ、その結果を待ち侘びる。

 木の根元に刺さる剣は、幾多の挑戦者を静かに拒み続けてきた。
 今回も……いや、今度こそ。
 そんな期待がこもった視線が向けられる。

 剣の柄に添えられた手は、幼くもしっかりとそれを握り締め。
 胸元まであろうかという長さの剣を、そっと引く。

 誰一人として、息をつくものは居ない。
 誰一人として、言葉を発するものは居ない。

 ただ、その場に居る全員が何かを待ち続けるかのように息をつめる。

 幼い力で引かれた剣。
 それは、これまで拒んできたものが嘘だったかのように軽く。
 元から刺さっているという事実など存在しなかったかのように

 いともあっさりと。

 切っ先を空気に晒した。

 漏れるため息。
 零れる歓声。
 湧き上がるのは、何が起こったのかわからないまま剣を見つめる少年への賞賛。

 かくして。
 剣は、正当なる継承者の手へと収まった。  
 
 

「――はい、お疲れ様ですー」

 その一言で、皆が瞬時に我に返る。
 そして、様々な感想を口にしつつ、その場をぞろぞろと離れる。
 自分も割り当てられた場所へと向かい、髪を解く。
 西洋の村人のような服を脱ぎ、いつもの普段着へと着替えて。
 ほっと一息。
 そして、ふと考える。

 今回は、どれだけ映るんだろうか?

 

お題を貰って書いたものです。出題者はしん太君。お題は「エキストラ」でした。
それをちょこっと加筆訂正。こんな感じで如何でしょうー。
最初は「シグムンド」とか「バルムンク」とか「グラム」とかあったのですが、これに落ち着いたわけです。はい。